武田信玄

■放送期間:1988(昭和63)年1〜12月
■原作:新田次郎
■脚本:田向正健
■出演者:中井貴一 柴田恭兵 若尾文子 杉良太郎
■見所:ダイナミックな武田信玄を描いた作品。特に番組最後の「今宵はここまでにいたしとうございまする」が流行語となった。

戦国時代、四方を山に囲まれた甲斐国で、知謀策謀の限りを尽くし強固な家臣団と国造りで領土を広げ、“戦国最強の騎馬軍団”を率い織田信長・徳川家康も恐れた男、武田信玄。
父を追放し我が子を死なせると言う家族・肉親の悲劇的関係に悩みながら独自の手法で信濃を平定、越後の上杉謙信と川中島で死闘を繰り広げる。
「人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なり」と言う信条で戦国時代を力強く生きた信玄の生涯を、大合戦シーンと豪華俳優陣で描く戦国絵巻。

原作は新田次郎の同名歴史小説の『武田信玄』と同じく新田作品の『武田三代』を融合させ、脚本家の田向正健がドラマ化した。
新田次郎小説の大河ドラマ化はこれが初めて。
前年の『独眼竜政宗』に続いて戦国時代を扱った作品であり、前年の「独眼竜政宗」の高視聴率の流れを受け、序盤の視聴率は極めて高かった。
本作も父子の確執など骨太のストーリーが高く評価され、平均視聴率も『独眼竜政宗』に次いで第2位である(2010年秋現在)。
なお、初回視聴率は42.5%、最高視聴率は49.2%、平均視聴率は39.2%である。

本作の為、舞台の山梨県では小淵沢町(現北杜市)にオープンセットが建設されるほどの力の入れようだった。
騎馬シーンについては小淵沢町にある乗馬クラブ、山梨県馬術連盟が全面協力し迫力ある合戦シーンを作り上げている。
また、劇中に何度か登場する武田騎馬隊の隊列は馬70頭を集め撮影された。
ただし馬を過度に酷使する撮影手法には馬の専門筋から否定的な見方もあったようで、『太平記』で乗馬指導にあたることになった日馬伸は足利市からオファーをもらった当初、自分は馬の立場から物を考える人間であり、「武田信玄」のように馬の酷使をするような大河ドラマの仕事には乗り気でなかったと述べている。

信玄の母・大井夫人(若尾文子)が、自分の息子が後世で誤解されていることが多いため、我が子の名誉のために真実を物語る、という体裁を全話一貫してとっている。
そのため、本編のナレーションも大井夫人役の若尾が兼ねている。
最終回および一部の回をのぞいて、各放送回とも大井夫人の「今宵はここまでに致しとうござりまする」というセリフによって締めくくられ、この年の流行語大賞に選ばれた。

第3回までのタイトル文字と第4回以降のそれとに違いがあるが、これは最初にタイトル文字を担当した海老原哲弥の受賞経歴の詐称問題により、他の書家のタイトル文字に変更になったからである。

甲斐の戦国大名である武田信玄(晴信)が主人公。
類似テーマとして、1969年に上杉謙信を主人公に第4回川中島合戦までを描いた海音寺潮五郎原作の『天と地と』、2007年に武田家の軍師山本勘助を主人公にした井上靖原作の『風林火山』がある。

後の『利家とまつ』を引き合いに出してよく形容される「ホームドラマ大河」といった要素は、本作品では控えめになっており、ひたすら重厚深長に戦国時代の人間の生き様が描かれる。
南野陽子・紺野美沙子といった当時人気の若手女優やアイドルに加え、男まさりの女武者「里美」の大地真央、小川真由美演じる「八重」が際立った存在感を出しており、他にも豪華な俳優陣を脇で固めていた。

この作品には中井をはじめ2世俳優が数多く登場した。
主演の中井貴一は本作が大河ドラマ初出演である。
彼が演じる信玄は終始髷を結っており史実とは違い、出家をしていない(ナレーションで信玄を名乗るようになった旨を語ったのみ)。
さらに、丸坊主に立派なもみ上げ姿に描かれた有名な長谷川等伯(信春)筆の壮年期の肖像画(高野山成慶院蔵)や、江戸時代に確立した赤法衣と諏訪法生の兜に象徴される法師武者など現在でも一般的な堂々としたイメージは踏襲されず、同時代の青年武将像に通じるやや線の細い華奢な印象を与えている。
ちなみに信玄のこうした描写姿勢の影響によるものか、本作品の上杉謙信も剃髪をしていない。

一方、登場人物を見ると内藤昌豊、秋山信友等登場しない有力家臣も多く、また穴山信君、小山田信茂と言った武田家滅亡時に離反した親族衆や勝頼期に活躍する跡部勝資、長坂光堅など従来滅亡の一因を作ったとも評されがちな奸臣とされていた人物は、一切登場しない。
また、信玄と関わりの深い僧である「心頭滅却すらば火もまた凉し」で有名な快川紹喜や原作には登場していた駒井高白斎も出てこない。
上杉家、織田家についても主要な人物(羽柴秀吉、明智光秀、丹羽長秀、柿崎景家等)は、登場しない。

KOEIの信長の野望シリーズに与えた影響は大きいといわれ、ゲーム内の武将の顔グラフィックスは本作品登場の俳優に酷似している事が多い(高坂昌信、武田信廉、真田幸隆など)。
信長の野望戦国群雄伝ゲーム終了時の表示「今宵はここまでに致しとうござりまする」も大河ドラマ終了時そのままのセリフである。

『川中島の戦い』がドラマ中盤最大の見せ場だが、オープニングナレーションでは『合わせて5回行われた川中島の戦い』と言っているにもかかわらず、劇中では4度目の戦いで終わっている。
5回目の合戦をあっさり飛ばしてしまったが、第5次川中島の戦いでは本格的戦闘が行われなかったとされる。
(Wikipediaより)

 
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